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 書きたくなった時に書いて放置しておく処。 好き勝手に書いてるわりに誰かに見てもらいたい願望あり。 染み込む白き沈黙へようこそ
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何もない場所だった。
何も感じない場所だった。
鍵は付いていなかった。
自分の息を、心臓を、止めなければ何も聞こえない場所だった。
ひらひらと白い影が舞っていた。

彼女がそこに足を踏み入れた途端に、わずかに部屋は色を持ち
かすかに温度を上げうっすらと息づいた。
ゆっくりと影、揺らめく輪郭をなぞり、ようやく見えた。
銀色、限りなく白髪に近いそれは今さっき開かれた扉から漏れる光を
誰よりも早く奪い久方振りの光沢を得た。
下って肌を描き、ゆっくりとそれはそれはゆっくりと上下する胸に目を止めて
そのまま床までの線を描きあげた。
パチリと瞬きをして視界を整えたところで、ようやく、それに気付く。
真白の、大剣
吸い付くように縋り付くように、境界を見定めるのがひどく難しい。
白が目について、白が見えにくくだがここには白しかない。

パチパチパチパチ

目が狂いを訴える。
白が痛い痛い痛い歪んで見えて
ゆっくりと頭を振って振り払う。
一歩一歩近づいている、錯覚。
距離が縮まらない距離感が掴めないどっちに向かっているのかわからない。
静かに静かに足音は響いてたしかに進んでいるはずなのに
たいして広い部屋でもないのに、気が遠くなるようなダルさ。
フラついて、だがどこに倒れるのだろうか。
どちらが床で、どちらが天井で、あちらが入り口で、あったような。
グラついてとっさに膝が、冷たい。
片方の手でグッと握りしめてもう片方の手が、冷たい。

サラリッと鈍く揺れた。

鼻と鼻がくっ付きそうな距離
幼さが抜けない頬はぷっくりとした弾力で冷気を放つ。

「こんにちは」

強張らない表情筋、彼女の笑みでそっと囁いた。
着いた膝をわずかずらして、触れた頬をゆっくりと撫でるように
押し付けるようにしてしまった紙袋をそっと床に下ろす。

「時折私の夢を見てくださっている気がして…有難うございます。」

独白に近いのかもしれないと、彼女は思った。
常であれば、きっと一瞬きょとんとした顔をしてすぐに笑うはずだから。
花が開くように、というより砂がゆっくりと崩れるように、
と言ったほうが近いような危なげな空気を湛え、とびっきりの笑顔を
浮かべるような人だから、と。
だからこうして冷たく独りで眠るこの人に、話し掛ける行為は独白に
近いのかもしれないと。
ただこうして話しかけて触れた頬にかすかに赤みが差したのも、わずかに温かさを
感じたのも、またこの白の幻ではないことを彼女は信じていた。
己の錯覚であればいい
あわよくば、この人の言葉であればいい
何も出来ないことを彼女は知っていた。
言葉の温度を、不感の白へ映していた。

ふわりと広がった乳白色
温かさを見て、息の白さに気がついた。
高い位置にある窓は、切り取られたように綺麗に四角く浮いて
本当に『枠』しかないのだとわかる。
寒いわけで
白いわけなのだ。
我ながらの出来の良さに頷いて、首元にそっと落とす。
いつかそれを巻いて、飛び跳ねながらありがとうと抱きついてきた時が春なのだ。
これを作りながら、そう決まっていた。
彼女がそっと手を離すと、乳白色は一際温かく不安げに揺れる。
映えて見えて
少し誇らしげに、彼女は笑いそっと立ち上がる。
白い息は、ゆらゆらとドアのほうへ漂い消えて、彼女は微笑んで
するりと白から抜け出した。



親愛なるコリー尻尾のお姉さんに捧ぐ
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「しんじゃえばいいのにっっ!!!」

死の意味すらわからずに(それは今も変わらないのかもしれない)
思いつく限りで一番の悪口として、あきらかに舌ったらずな発音のままに
キンキンと響く子供特有の大声で叫んだあの日。

「うん」

私は人を殺した。
世界を壊した。
絶望した。
片手で足りるほどの歳で、私は心の底から恐怖した。



「なんでっっ?!なんでっっ?!」

狂気した。
ただ怖くて、泣きながら何度も何度も殴った。
震えが止まらない、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっっ!!!
分からないわからないなんで?なんで?なんで?なんで?!
ギラリと煌く白刃は地面に転がればただのモノでしかなかった。
子供の手にも収まるそれは本当に小振りの小刀だった。
もっと大きなものだって見慣れていたというのに
「その時」はただただそれが恐ろしかった。
それが凶器であるのだと、知った瞬間。
思い出して、恐ろしさにただケモノのように絶叫した。
声にならない声、耳をつんざくような金切り声。
肩で息をして、呼吸がしにくくて、芯は冷えきっているのに
熱さにあえいでいる身体は地面に押し付けている冷たさに、また恐怖した。

「どう…し、て…!!」

馬乗りになったまま、カタカタと震える私をその瞳は映していない。
ひどく冷たい身体、それによって急速に熱を奪われた私はひどく戦慄し
身体の震えを止められないままカタカタと揺れていた。

地面にばら撒かれた髪が、さらさらと揺れた。
露になった首筋がゆらゆらと揺れている。
分からない。

カッとする、というのはこのことを言うのだろうと、幼いながら私は思った。
グッと両手で掴んだ首は驚くほど頼りなく、また冷たかった。
一生懸命力をこめる。
うまくいかない。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いしんじゃう!!

「しんじゃうよっっ!!しんじゃう!!」

馬乗りになって全体重でもって、首を絞めにかかった私はただそれだけを
叫んでいたように思う。
だんだんと、震えがひどくなって、もとより入っていなかった力が
どんどん抜けていって、そのうちまったく力が入らなくなった。
ヘタリッと半ば押し付けるように凭れかかる。
自分より華奢で、白くて、頼りないそれにすべてを預けてしまった。

「ダメ…!!しんじゃ…ダメ!!」

掠れた声で、なんとか呟いた。
どうすればいいかわからなくて、わからなくてとても怖くて、
ただ怖くて、悲しくて悲しくてそのまま泣き出してしまった。
意識が遠退くまで、泣きつづけたあの日。

目を覚まして、母の泣きはらした目をみた瞬間に走った。
あの部屋へ、大っ嫌いなあの部屋へ

「おはよう」

あの人は、笑っていた。
ひどく緩慢な動きで、だがまったく迷いなく己の胸に刃を突き立てた人
私が殺した人
私が殺しかけた人
私が壊した人
私が壊してきた人

その手から、あらん限りの力でもって刃を叩き落とした後の、記憶はひどく
曖昧で、いっそ夢ならと淡く願った私はひどく傷つき、ひどく安心した。
生きている。
こんな姿で、こんなカタチで、この人は生きている。
こんなにも悲しい
思わず目を逸らした私の耳に、聞こえたあの声を今でも鮮明に覚えている。
小さな、嗚咽
泣いて、いた。
私が目を逸らしたから、私が悲しい顔をしたから、あの人はあんなにも
顔を歪ませて泣いている。
母が来るまで、私はただ呆然とそこに立っていた。
目を見ることができず、でも顔を背けることもできず、そうしてただあの人の
首を食い入るように見つめていた。
首に巻かれた、白い包帯。
あの下には、あの下には、残っているはずだ。
今でも、その白い首に鮮明に思い描ける。
見てもいない手の跡
私の手の跡
締め上げた感触はついぞ思い出せない。
あの人は生きているから
私が死ぬなと言ったあの人は生きているから
生きて笑っているから

こんなにも悲しい
こんなにも愛しい

同じ血の中
同じ囲いの中
手と手を繋ぎ

「嘘泣き」

あの頃でさえ小さく思えた小刀が、なんと小さいことだろう。
あの頃あんなに歪んで見えたものが、なんと鮮やかなことだろう。
切っ先は私に、あの人は笑って
あの頃の笑顔と、なんと変わらないことだろう。

「まだ持っていたんだね?」

私は、首を振った。
あの時の、あなたと同じ

「分からないよ。」

えぇそうね、なら教えてくれる?

「分からない。」

一層笑みを深くして、あなたは刃を投げた。
私の頬を掠めて、遠く、きっともう見つからない。

「もうイラナイ」

嘘つく必要はないもの
そう言って笑い合った。
そんな嘘

本当は 痕なんて はじめから なかったくせ に
黒い黒いカタマリがトロトロと溶け出して
透明な液体が静かに蒸発していく。
ゴフッ
なぜだろう
今日は
血がやけに甘ったるい

またダメにしてしまった服。
なぜ汚れ易い色を?たまに聞かれる。
だからだよ。そう答えた。

ひどく眠いけど
やっぱり目を閉じるのは怖い。
―目ノ裏に黒イモノガ溜マッテル
―目ノ中ニ白イモノが満チテイル
頭の中に見えない見えない見えない見えない。
口元が緩む。
あぁ毒が溢れている。
あとは、
呑むか、呑まれるか
引き込まれるように、眠りにつく。
じわじわと侵されていく感触
それは、あなたに撫でられているような
そんな心地良さがありました。
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